HAL8192のモノリス達

何故、自分がポンコツになったかを嬉しそうに語る。

雑学としての面白さ!「図解なんかへんな生きもの」

雑学としての面白さ!

「図解なんかへんな生きもの」

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昨今、面白い生きものに関する本がブームになっており、本屋では特別にコーナーができるほどになっている。そんな中で、非常に読みやすく、かわいらしい絵柄と小ネタ満載で描かれているのがこの本だ。

 

元々はツイッターで人気が出たことから、派生してこのような本が出るようになった。

著者はぬまがさワタリという人物で、生きもの、映画、ドラマ、ドキュメンタリー、アニメを主に取り扱って活動している。

ぬまがさワタリ@『絶滅どうぶつ図鑑』10月発売&吉祥寺PARCOで個展開催! (@numagasa) | Twitter

 

なかなか個性的な絵と独特の言葉選び、ユーモラスな解説が面白く、雑学として楽しく学ぶことができる内容に仕上がっている本だ。例えば表紙にもなっているカモノハシの生物としての特殊さ、異様さの解説はわかりやすい図解と共に面白おかしく解説してくれる。これが、日常会話の中で使うには丁度いいレベルの面白さの雑学で素晴らしい。

 

また、なんかへんな生きものと題しているだけあって、確かに不思議な生きものを多岐に渡って解説している。この範囲がなかなかに広く、生物の常識を覆すようなものたちを解説している。

 

例えば、不老不死、単為生殖、文法、新社会性哺乳類、恒温性魚類などなど一般常識からかけ離れた生きものについて語っている。これらを小学生でも理解できるレベルで分かりやすく解説している。ある意味生物多様性などの今後重要になってくるキーワードに興味を持たせる為の教材としても良いかもしれない。(まあ、雑学が主だが)

 

特にお勧めできる内容に「アライグマ」の項目がある。ここでの解説が非常にユーモラスに小ネタを挟んできていて、つい笑ってしまうものだった。解説そのものは非常に上手く出来ているし、イルカがせめてきたぞっ等の小ネタが非常に良かった。ただ日本では70年代からあらいぐまラスカルの影響もあり、アライグマの飼育数が激増と野生化が問題になり、外来種として駆除されるようになるという悲しい事実もちゃんと描かれていた。

 

ただの雑学本として読んだとしても十分に面白く、愉快であって、さらにおまけで生物についてほんのちょっと詳しくなることができる楽しい一冊だ。

 

さらに、続刊として「ゆかいないきもの図鑑」「絶滅どうぶつ図鑑」とこの出版不況のなか立て続けに出版されており、そちらもお勧めだ。またツイッターの方も映画ネタのイラストがときたま上がっているので、是非注目して欲しい。(はてなブログにも上がっている)

不思議で意味深な邦題 「この森で、天使はバスを降りた」

不思議で意味深な邦題。

この森で、天使はバスを降りた

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原題は「The Spitfire Grill」というタイトルで、スピットファイアという戦闘機と料理店と意味合いで、特に天使とはなんの関係もない。

 

設定としては閉塞感漂う田舎町に、刑期を満了した女性が一人降り立ち、とある食堂に住み込みで働くという内容だ。


この設定に、この邦題をつけたのはかなり強引だが、ついつい惹かれてしまったので、宣伝効果としては見事だと言える。


物語は排他的な田舎町の食堂に異物として入り込んだ主人公パーシーに対する周囲の奇異の目線とその中で、奮闘する彼女の姿を見せていく。


パーシーの刑務所に入れられた理由が鍵となってくる作品であるため、深くは語らないがかなり重い過去を背負って生きているのは序盤から伝わってくる。


それでいて周囲の人間には刑務所帰りのよそ者がなんでこんな田舎町にやってきたのかと嫌な注目のされ方をすることになる。


そんななか、パーシーは懸命に働き、食堂のオーナーのハナから信頼を集めていく。


だが、ハナは不慮の転倒で怪我を負ってしまい、厨房に立てなくなってしまう。そんな中で、パーシーの頑張りやシェルビーという甥の嫁が手助けに入りなんとか切り盛りしていく。ここで二人は友情に芽生えるが、パーシーは過去の事を忘れられずにいる。


そんな中、随分前からハナは食堂を売りに出しているが買い手が付かない現状を嘆いていた時に、新しいオーナー募集のために、参加費100ドルの作文コンテストするのはどうかとパーシーは提案する。刑務所内にいた時に似たような方法で、上手くいった例を受刑者の仕事として体験していたので、アイデアとして提案し、採用された。


そんなこんなで、店をコンテストの商品にして、手紙を募るのが……


今作は小さな田舎町で人生をやり直そうとする主人公とそれに排他的な町の住民との葛藤を描いた作品という印象を受けた。


どうしようもない過去を持つ者が、どう生きるかという事とその事実をどう扱うか?

つまりは主人公を「理解」する物語、外部から入ってくる変化をどのように受け入れるかという物語だった。


この物語はある意味、心地よい終わり方ではないかもしれないが、変化を町が受け入れて終わるのは良い終わり方だと個人的には感じた。(とある人物が許せないと思うのは仕方ない)

 

総論としては閉鎖的な田舎町に異物としてやってきた刑務所帰りのよそ者というレッテルをどう見つめるのか?という内容だった。相手をレッテルだけで理解した気になるのは簡単だが、そうではいけないというメッセージが込められた作品だった。

今までで一番泣いた映画って何?

今までで一番泣いた映画って何?

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最近、割と気軽にこんな質問をされた。軽食の最中にまあ、顔見知り程度の人との軽い雑談の中でだ。その人は軽い気持ちで聞いてきたんだろうし、怒るようなことではないのはわかっているが、私は映画に求めているのは安易なお涙頂戴ではない。涙を流したくて、映画を見ているわけではないと強く言いたかった。(そんなに泣きたいなら玉ねぎでもみじん切りにすればいい)

 

ただ、ここで感じたのは、相手がこちらをある程度映画を見ている人という前提で、どんな映画を見て泣いているのか?ということがまあ多少気になったということだろう。だが、私は正直に言えば意図的にお涙頂戴してくるような映画は大っ嫌いであるので、例えそのような映画で泣いてしまったとしても映画の評価は涙の数とは比例しない物と捉えている。

 

そもそも涙を流すのはその日のコンディションに依存されやすく、徹夜明けの休日にアルコールを摂取しながら、見る映画で倫理的に許されないような行為や悪逆非道な目に逢うような作品を見れば自然と涙が出てくるものだ。

 

例えで上げるならずいぶん前に紹介した「ルーム」という作品だ。

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この映画については以前の記事を参照にして欲しいが、実在の事件を基にした虐待を扱った作品で、子供が酷い目に逢っていれば生理的に涙が出てくるものだから、おそらくこの映画で、一番泣いたと思う。(一応この映画はとてもいい映画ではある)

 

しかし、正直に言って涙を流す映画=良い映画という図式には個人的感情からそうはならないと思う。ただ泣かせる演技をするようなある意味下品な映画、例えば難病ものと呼ばれる作品は作り方によっては強制的に涙腺を刺激することはできるが、質が良い作品と呼べるかどうかは別だろう。

 

確かに感情が揺り動かされたことを表す指標として、「泣いた」という事は大きいのかもしれないが、ゾンビ映画一般ではまず人は泣かないが、面白さという意味合いではどちらが上か下かなんて言えないだろう。(ジャンルムービー一般に言えるかもしれない)

 

良質な作品というものを測る物差しに「涙」という基準は少々、不適切だと個人的には感じる。「涙」というものはその作品よりも鑑賞者の涙腺の強度によるものだし、アルコールや睡眠不足によって簡単にその強度は崩れてしまうと言える。

 

まとめとして、「涙」という点だけで言えば映画館で涙を流すより玉ねぎを刻む方がコストパフォーマンスは良いし、確実性も高いので、泣きたいだけなら断然玉ねぎをお勧めする。

流石のパルムドール !「わたしは、ダニエル・ブレイク」

流石のパルムドール

わたしは、ダニエル・ブレイク

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あらすじはイギリスの複雑な制度に振り回され、貧困という現実に直面しながらも助け合って生きる人びとの姿が描かれる。イギリス北東部ニューカッスルで大工として働くダニエル・ブレイク。心臓に病を患ったダニエルは、医者から仕事を止められ、国からの援助を受けようとしたが、複雑な制度のため満足な援助を受けることができないでいた。シングルマザーのケイティと2人の子どもの家族を助けたことから、ケイティの家族と絆を深めていくダニエル。しかし、そんなダニエルとケイティたちは、厳しい現実によって追い詰められていく 引用元 映画.com

 

世界には何人のダニエル・ブレイクがいるのか考えさせられる作品。


この作品は、単純な貧困の問題を描いた作品ではなく、貧困に立ち向かう人々のお話だった。


ストーリーは主人公のダニエルが、心臓病で働けなくなることから始まる。ここでの演出が上手い。映画の始まりが、自分の症状を役所の役人に説明するのだが、まるで話が人間的でない受け答えをする役人。これが、物語で何度も何度も何度も嫌という程繰り返される。


そしてそんな役所で、偶然出会ったシングルマザーのケイティと出会う。ここから物語は二人が不器用ながら支え合って行くが、ハッピーエンドに向かって行くわけではなく、どんどん貧困が加速して行く。


物語はある意味先が読めてしまう作りになっており、そっちに行くなと何度も思わされるが、現実のように貧困という坂を転がり落ちて行く。これが現実とかけ離れていると思えればいいのだけれど、まったくそんな甘い描写はなく、実際のドキュメンタリーを見ているような気分になるような構造になっている。


ただ、それでもなおダニエル・ブレイクは自分が何者なのかを訴えてくる。これが本当に自分は存在していていいんだと訴えてくるようで、行き場のない人々に対してのメッセージにもなっていた。

 

物語の終わりもある意味訴えて終わる。完全にハッピーエンドというわけではないが本当によく出来た物語になっていると言える。

 

これはフィクションという領域だと思わずに見たほうが良い作品だった。(実際の社会情勢の問題も過分に含まれているため)

 

総論としてはこれはフィクションではあるが、現実問題として捉えた方がいい映画だった。そして勇気をもらえる映画でもあり、とてもクオリティが高く流石はパルムドールだと思わされる作品だった。

 

 

戸田誠二という漫画家について

戸田誠二という漫画家について

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もともとWEB漫画を自身のサイトに公開していたところから、デビューが決まった作家で、主に短編を得意としている。今でも作者サイト「COMPLEX POOL」は見ることができ、そこで秀逸な短編を読むことができる。是非気になった方は読んでみてほしい。この頃から商業誌で通用する作品群を作り出している。

 

この作者は人の人生を扱った題材の作品を多く出版しており、どれも奥深い物がある。といか、とある人生のある一面を描くのが非常にうまく、数ページの短編でその人の人柄をうまく表現している。

 

この人の作品は人の感情を揺さぶられるような強いテーマを本当に短編で描きこみ、それを読み込まさせてくる。説教くさいような内容も当事者の気持ちを本当にうまく書き込み、表現してさせている。そう、当事者の感情を描くのが本当にうまい作家で、日常の些細な感情の機微をうまく表した作品が多い。(コメディ的な作品も書くが、これも日常の中の一面を表現したような作品だ)

 

特におすすめの一冊は音楽と漫画と人」という一冊だ。

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この作品はその名の通り音楽、漫画、そして人がテーマになっている作品で、2ページごとに話が構成された短編の集合体となったかなり形態としては変わった作品だ。(なかなか商業誌ではこのサイズで掲載されることがないため)

 

だが、このサイズ感で一編ごとのクオリティがとても高く、読んでいて音楽が人生に寄り添っているものとして上手に描かれ、人と人を結んでいく様を見事に漫画という形態に落とし込んでいる。

 

特にこの人の作家性を表している短編がある。「シメキリ」というタイトルの短編で、ある漫画家が、一か月、30ページで一人の人生。1年で12人の人生それも生涯のほんの一片しか書けないと思いながら、自分が死ぬまで書き続けたときに何人の「架空の人生」を書けるのか?と夢想する話だ。これが戸田誠二という作家の精神性なのだと思う。

 

「架空の人生」を見事に描き切るのがこの作家で、人生に悩み落ち込んだ時にキーワードとなるようなものを短編に落とし込んで描いているのが本当に見事だ。

 

 

子供というかけがえのないもの「永遠の子供たち」

子供というかけがえのないもの。

永遠のこどもたち

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あらすじは自らが育った孤児院を、障害を持つ子供達のための施設に再建することを決めたラウラは、夫と息子のシモンと古い屋敷へ引っ越してくる。しかしその屋敷で、シモンは空想上の友達と遊ぶようになり……引用元映画.com

 

ホラーの区分に入れられているが、ちょっとそうじゃないような話。(確かに霊的な要素はあるが)


感想としては、布石の置き方、心理描写、映像表現どれをとっても質のいい作品だった。故に、とても細やかな描写の連続で、ホラー的な衝撃は少なかった。

 

純粋に恐ろしいものを見せるというよりも丁寧に丁寧に、主人公を追い込んでいく描写は見事だが、恐怖というよりも悲しさや虚しさが先に来るような描写になっている為、単純なホラーではない。それによって、人を選ぶ作品にはなりそうだが、ただのスプラッターにはない魅力に溢れている。

 

豪快に血糊をぶちかますタイプのホラーではなかったが、繊細な作りと見事なまでのシーンの連続で素晴らしかった。まさに母親の愛を感じさせる内容で素晴らしい。

 

不思議な友達、幽霊とも言える存在、そういったものに対して、どういう回答を見せるかというのがこの作品の肝となっていて、それが明かされていくに従って、どんどん面白くなっていく。

 

また、子供というものをどう見つめるか?どれだけ重要なものなのかということがテーマにあるので、ホラーの中でも特に感動させられるような内容になっている。最低でも母親の視点だけから見れば単純な物語ではない。


そう、これはきっとハッピーエンドの作品だ、そう思わせるだけの力のある終わりだった。

個人的にそう思うだけかもしれないがこの着地はこの物語にとても寄り添っていて、見えない子供というもの、霊的なものに対してとても優しさのある終わり方だと思う。

 

総論としては純粋にただ怖い、恐ろしい殺人鬼が出てくるようなホラーを期待してみるとがっかりするかもしれないが、徐々に追い詰められていくような感覚と繊細な映像、それと母親の強い愛情を感じさせてくれるようなちょっと不思議な優しさがある作品を見たいなら本作はオススメだ。

一人映画の楽しみ!「木根さんの1人でキネマ」

一人映画の楽しみ!

「木根さんの1人でキネマ」

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映画は複数人で見る方が邪道だ!とでも言わん限りの「おひとり様」っぷりで映画を鑑賞し、自身の感想ブログにその映画の評価をつけるというアラサー女性の日常を描いている作品。

 

基本は一話につき一本の映画について取り上げ、ああでもないこうでもないとうなりながら、映画の感想を語るというスタイルを取っている。基本的に取り上げる映画は往年の名作や刊行時期に流行っていた作品を語っている。また映画ファンあるあるや妙なこだわりを見せたりするのをさらけ出している。例えばシュリンクされたままのDVDが棚済みされ、さらに記念盤の同じタイトルのDVDまで購入してしまうなど、映画好きのあるあるをよく理解して描かれている。

 

また、どちらかというと重いテーマのカンヌ系よりも頭の中空っぽにして、見るようなアクションやホラーを好んでいて、それでいて映画への変なこだわりは人一倍強いのが何とも言えない。

 

こんな主人公なのだが、設定の上ではバリバリのキャリアウーマンで、仕事はできる設定になっているが、周囲には自分が映画マニアであることは隠し通しているという設定で、そのギャップに笑わされる。というか職場での映画談議になった際に、心の中の声が明らかに映画マニアの嫌な一面が存分に出ていて、最高だった。

 

こんな主人公になった理由は物語の中で語られるが、その理由がなんともまあ、映画マニア的で素晴らしい。この理由が最初のお話に収録されておりそれは無料公開されているので、気になったら読んでいただきたい。子供のころ初めて、日曜洋画劇場である映画を見たことをきっかけに映画という沼にのめりこんでしまうが、これが実によく描けている。

manga-park.com

そして、大人になり、社会人の財力を遺憾なく発揮して、どっぷりと映画というものにのめりこんで、行く姿は正直、面白いが婚期を逃してしまったアラサー女性というものの象徴でもあるので、こうはなりたくないな~と思ってしまう。あまりにも話に共感出来てしまうので、ちょっと将来が心配になってくる。(確かに異性よりも映画の方が魅力的なのは痛いほどよくわかる)

 

実に、映画マニア向けの漫画になっていてレベルの高いギャグセンスとあるあるネタにやられるが、意外と読みやすいように構成されていたり、程よくバランスの取れた解説がされていたりと、割と漫画としての完成度も高い。

 

とにかく映画マニアを自称するような人種にはぴったりの作品なので、ぜひ読んで欲しい。