死者の国の色鮮やかさ
「ティムバートンのコープスブライド」
あらすじはアニメーター出身の鬼才ティム・バートン監督が、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』『ジャイアント・ピーチ』に引き続き挑んだブラックユーモアたっぷりのファンタジーアニメ。声優陣には、ゴールデンコンビとして知られるジョニー・デップや監督の妻でもあるヘレナ・ボナムカーターらを迎え、人間とゾンビの奇妙なラブストーリーを描く。全編をとおして昔ながらの「コマ撮り」で撮影された映像は、最近のアニメーションにはない深い味わいがある。恋人のビクトリアと結婚間近のビクターは、間違って別の女性と結婚の誓いをしてしまう。しかもその女性はすでに死んでいて……。引用元 シネマトゥデイ
物語は政略結婚させられようとしている二人の最後の晩、夫側が翌日の式典での台詞を練習している最中、つい指輪を木だと思ったところにはめたらそれは死者で婚姻の証として受け取られたところから始まる。
まず始めに生者も死者もデザインセンスが抜群に良い。リアリティとはかけ離れたアニメーションだからこそできるビジュアルをしているがそこがたまらなく素敵だ。
そして、死者との婚姻という摩訶不思議な題材を本気でやってのけているのが凄い。
普通なら発想まではしても実践しようとは決して思わないテーマを本気で挑んでいる。
ここで描かれる死者の国が本当に面白く、愉快でいわゆる死者の暗いイメージとはかけ離れた存在なのもユニークで面白い。ティムバートンワールドの一端を見た気がする。
また、時代背景的に恋愛結婚が主流ではなく政略結婚がまだ根強い時代というのも物語に重要な要素だ。
主人公の夫側の方は最初はてんやわんやで何が起こったのかもよく理解できていない状況から、とにかく逃げ出そうとするが、ここでのリズミカルな死者の国の解説が見事だ。
また、本作は77分とかなり短く、展開が詰め込まれているが、それが気にならないテンポで進むから面白い。
敵役が誰かというのも一瞬でわかるのはお約束としても、その結末が案外グロテスクでティムバートンらしいブラックな側面もきっちり用意されている。
そもそも全面的に死体だらけの画面で構成され、ブラックなジョーク連発な時点で、かなり子供向けではないのかもしれないが、終わり方は驚くほど綺麗だった。
あの月のショットと前にあった台詞とが綺麗に重なり、悲壮感を感じさせない作りになっているのも良い。
ティムバートン的には何だかんだあったがハッピーエンドということなのだろう。(後始末がかなり大変そうと思うのは私だけでは無いと思うが)