HAL8192のモノリス達

何故、自分がポンコツになったかを嬉しそうに語る。

見えない物の美しさ「地下鉄」

見えないから見えるものがあると良く言うけれど、それを絵本にして視覚化した作品がある。

それが、この「地下鉄」という作品だ。

f:id:HAL8192:20180321123124j:image

お話は盲目の少女が一人地下鉄で旅をする模様を美しい風景と共に見せていく内容だ。

 

都会の喧騒の中、階段を降りる描写も戯画的に描かれ、永遠に続く階段のように描かれる。

 

そう、このお話は盲目の少女が見た、心理風景として描かれていく。

 

どこまで、行けるのかわからない不安や人の波に揉まれ居場所を失う心理を繊細な絵のタッチで描いていく。

 

彼女は地下鉄を使い、人生を「見て」まわる。

 

秋の美しい紅葉や広大な海、出口のない迷宮、これら心理的世界感を感情豊かに「見て」まわっていくのだ。

 

そこにはいつも美しい景色があるわけではなく、時には孤独を痛感させられるような景色も存在する。

 

それでもどうどう巡りにさまよい、間違いをおかし、どこにいるのか、どこに行きたいのかも分からなくもなる。

 

深い霧、ぬかるみに足を取られることもある。

 

もう一度、世界を「見れる」なら何が「見たい」だろうか?

 

そんな心の模様を素晴らしい色彩美とともに我々に「見せて」くれるのがこの本だ。

 

この後、彼女は葛藤し、悩み、苦しみ、世界を旅する。その旅に読者も同行することになる。

 

素晴らしい絵となんとも言えない詩とともに彼女の旅は進んで行く。それは成長とも忘却とも言いあらわせるようだ。

 

それこそが、人生を歩むと言うことだと言うように進んで行く。そして、悲しみにも満ちた人生の中で、物語はある方向へと進んで行く。

 

それを単純な希望と読むことはあまりにも安直だけれど、それがなくては生きていけない。

 

一回読んだだけでは物足りないほど、考え深い物を心に残してくる一冊だ。