HAL8192のモノリス達

何故、自分がポンコツになったかを嬉しそうに語る。

時間旅行ぼけ「犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」

世界が美しく見えるのは時間旅行ぼけのせいだ。犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」

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あらすじはオックスフォード大学史学部の学生ネッド・ヘンリーは、第二次大戦中のロンドン大空襲で焼失したコヴェントリー大聖堂の再建計画の資料集めの毎日を送っていた。だが、計画の責任者レイディ・シュラプネルの命令で、20世紀と21世紀を時間旅行で行ったり来たりさせられたネッドは、疲労困憊、ついには過労で倒れてしまった。シュラプネルから、大聖堂にあったはずの「主教の鳥株」という花瓶をぜひとも探し出せと言われていたのだ。二週間の絶対安静を言い渡されたものの、シュラプネルのいる現代にいては、ゆっくり休めるはずもない。史学部のダンワージー教授は、ネッドをのんびりできるにちがいない、19世紀のヴィクトリア朝へ派遣する。ところが、時間旅行ぼけでぼんやりしていたせいで、まさか自分が時空連続体の存亡を賭けた重要な任務をさずかっているとは夢にも思っていなかった…。引用元 Amazon「BOOK」データベース

 

内容はとにかく荒唐無稽なタイムトラベルもので、500ページを超える内容と、異常なまでの伏線と布石で出来上がっている。ここが異常と言って良いほどに完成度が高い。

 

最初の100ページはこの物語の設定である、時差ボケに似た現象であるタイムトラベル酔いによって現状がどうなっているのか全くわからない状態が続く。これが意図的に行われており、少々どころかかなり読みにくい。

 

しかし反対に後半100ページは異様とも言えるほどの伏線・布石の回収が行われ本当に見事な出来栄えをしている。

 

もともとボートの3人男という小説にオマージュを捧げ作られた作品で、ヴィクトリア朝時代特有の面白さがふんだんに盛り込まれてもいて、面白いが、それだけではなく、基本となるSF、歴史物、ミステリ、ラブコメディ、その為諸々のジャンル物に仕上がっている。

 

読みにくい作品だが、内容は本当にしっかりとしていて、無駄と言える箇所が本当に少なく、もしかしたら全て計算かもしれないと思わせるほどの内容になっている。本当によくできている。

 

それでいて魅力的なキャラクターたちが織りなすコメディは笑わせながら、物語を着実に推進させ、後半の怒涛の展開へと誘って行く。

 

そして、ここでの人間模様があらぬ方向へ行ってしまい、とんでもないことになってしまうのもこの作品の魅力の一つだ。

 

とにかくキャラクターが立っている作品は魅力的である。これは基本としてやはりあるものだろう。

 

そして、題名でもある犬が出てくるが、むしろ猫の方が活躍しているようにも感じられる。これにもキチンとした意味があり、見事!(文庫本版では後半は猫が表紙)

 

とにかく台詞まわしが異常にうまく、ここに書いてしまうとネタバレになるが、強調して何度も印象的に出た言葉が実は本当に意味を持っているのは見事としか言いようがない。

 

またタイムトラベルの法則性も本当に綿密に書き込まれており、よくこんなアイデア思いつくなと思うほどに綺麗に出来上がっている。

 

そして、未読の方には説明できないが、副題である主教の鳥株がどこにあるかなど本当にミステリーとしても完成度が高く、読み応えたっぷりの本だった。説明が綺麗に着くところがなんとも言えない。

 

ただ、序盤は少々苦しいので、要注意。その後からどんどん面白くなって行く。ハードなSFとしてヒューゴー賞ローカス賞のほか、クルト・ラスヴィッツ賞を受賞した本作を進めたい。きっと最初の100ページを読む時間の10分の1のスピードで後半100ページを読みきってしまう内容になっている。