HAL8192のモノリス達

何故、自分がポンコツになったかを嬉しそうに語る。

死者への敬意「サウルの息子」

死者への敬意。

サウルの息子

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あらすじは強制収容所で死体処理に従事するユダヤ人のサウルが、息子の遺体を見つけ、ユダヤ教の教義に基づき葬ろうとする姿や、大量殺戮が行われていた収容所の実態を描いた。1944年10月、アウシュビッツ=ビルケナウ収容所。ナチスにより、同胞であるユダヤ人の死体処理を行う特殊部隊ゾンダーコマンドに選抜されたハンガリーユダヤ人のサウル。ある日、ガス室で生き残った息子と思しき少年を発見したものの、少年はすぐにナチスによって処刑されてしまう。サウルは少年の遺体をなんとかして手厚く葬ろうとするが……。引用元 映画.com


ユダヤ人として、差別されホロコースト内での最後のプライドの物語。


自分の息子をホロコースト内で安らかに弔う為に、自分にできる全ての事を駆使して、最後の別れをなんとか正当な形で行いたいという事に主眼が置かれた作品。


そのための工夫として、ピントが異常なまでに主人公に向いており、周りがボヤけ切っている。そのボヤけた中に明らかに不穏な空気を漂わせるものが映り込むが、主人公はどうすることも出来ず、ただ呆然とするだけ。ここがとても特徴的な映画で、この異常なピントが最後まで続く。


この視点で部品としてまるで、代替品があるかのように使い捨てられる命を、観客は主人公と同じく、暗闇のそこから覗き見る事になる。


これが非常に辛い。物として扱われる生命と唯一自分の息子だけには最後の時くらい命をかけて葬いの時を作り出そうとするその姿は人間味溢れるが、内容はあまりにも凄惨で救いが一切ない現実を描いている。

 

内容が内容だけに、とても後味が悪く、正直見て気持ち良い作品ではないが、ホロコーストの現実を嫌なほど見せ付け、あまりの差別的なこの歴史的事実を見せてくる。

 

そこに作り手の情念のようなものを感じずにはいられない。それでいて、独特の切り口から見せるこの手法は一人の人間の悪夢にも似た日々を映し出しているようにも受け取れる。

 

総論としては人間として決して踏み越えてはいけない一線を踏み越え続けることを強要される日々に、最後の抵抗をみせるギリギリの精神のお話だった。とてもじゃないが事実としてあった事を元にしているとは思いたくないが、目をそらして片付けてはいけない問題だろう。